1881年夏の出来事
コメットは19世紀末に米国で生まれた金魚です。日本から輸出された琉金の中から、アメリカワシントン水産委員会の池で発見された琉金の突然変異個体を、ヒューゴ・ムラート(Hugo Mulertt)がそれをフナと交雑させ、選別・淘汰して固定したのが始まりです。ムラートはドイツ出身で米国に移住したアクアリストで盆栽家としても知られています。
コメットはその後日本に逆輸入され広く普及しました。V字に長く伸びたフキナガシ尾が特徴で、体色は黄色、オレンジ、赤、白、更紗(赤白)と明るい色味です。朱文金と似ていますが黒い模様は入りません。更紗が基本色ですが、最近は黄色のレモンコメットが人気です。大きくてスマートな体で泳ぎが早く、寿命は10 – 15年と、他の金魚に比べて丈夫で長生きします。成長すると体長は25 – 30cmにもなることもあります。動きが素早いので、他の金魚と同じ水槽に入れるとエサを独占してしまいます。
さて、ヒューゴ・ムラートがこの新しい品種を発見したのは1881年の夏のことでした。「大草原の小さな家」の作者ローラ・インガルス・ワイルダーは自伝「パイオニア・ガール」で、その当時の大きな出来事として空に大きな彗星が現れたと書き記しています。彗星(C/1881 K1)は当時シンシナティにいたムラートも目撃し、この金魚が彗星のような長い尾を持つのでComet(彗星)という名前を名付けました。
ムラートはシンシナティで金魚養殖場を営んでいましましたが、1884年のオハイオ川の洪水が彼の数千匹ものあらゆる種類の魚を流し去ってしまいました。珍しい魚も含まれたといいます。その後ムラートは金魚養殖場を再興したのかわかりませんが、季刊誌「アクアリウム」を発行し、アクリウムブームの立役者となりました。シンシナティはオハイオ川の栄養豊かな水質が養魚に最適で1970 年代まで、米国最大の金魚生産地の一つでした。
参考文献
東京アクアガーデン | コラム | コメットとは!大きくなる金魚の特徴・寿命・飼育方法を解説 | (2023年8月10日) 2024年8月24日閲覧
Sanders, Jessie. (2020, July 12). Comet Goldfish Species Profile, The Spruce Pets 2024年8月24日閲覧
Cosgrove, Nicole. (2024, July 30). Comet Goldfish: Care, Pictures, Temperament, Habitat & Traits. Pango Vet. 2024年8月24日閲覧
Tippit, Lovel. (2021, May 9). Hugo Mulertt. Aq history 2024年8月24日閲覧
Have you seen the comet?. Laura Ingalls Wilder A – Z. 2024年8月24日閲覧
Orchiston, W. (1999, January). C/1881 K1: A Forgotten “Great Comet” of the Nineteenth Century. 2024年8月24日閲覧