Gymnothorax isingteena (Richardson, 1845)
「ニセ」ものか本物か
全長1.8m。西太平洋の熱帯域、日本では伊豆半島以南に分布します。ウツボとしては最大級でありますが、飼育下では大人しい魚です。淡色の体色に碁石のような黒斑点を持つのが特徴で、斑点は成長と共に小さくなります。
「ニセ」や「モドキ」と名が付くのはそっくりな種が先にいて、容姿が似ているから名付けられることがほとんどです。しかし、ニセゴイシウツボの場合、ゴイシウツボという種は存在しない稀なケースです。正確に言うと、かつては存在していたのですが、これらは同種でニセゴイシウツボが成魚、ゴイシウツボ Gymnothorax pescadoris (non Jordan & Evermann, 1902) が幼魚であるとわかり、ニセゴイシウツボの名前に統一されたと言うわけです。しかし、なぜニセの方を残したのか、疑問が残ります。実は標準和名の順番とは関係なく、学名が記載されたのがニセゴイシウツボのほうが先だったからです。
繁殖に関しては謎に包まれていましたが、近年の研究で繁殖行動が明らかになりました。メスが遊泳した際にオスが追尾を始め、次にオスがメスの下顎を咥えて縦泳ぎの状態で上昇し、その際に放精・放卵を行うようです。

参考文献
“Gymnothorax pescadoris (non Jordan & Evermann, 1902)” World Register of Marine Species. 2025年5月5日閲覧
サカナト | 記事 | 水族館でみられる<ニセゴイシウツボ>の名前に「偽」がつく理由 ホンモノは幻に? | (2025年4月2日) 2025年5月5日閲覧
大西 遼, 佐久間 夢実「水槽内で観察されたニセゴイシウツボの産卵前行動」Nature of Kagoshima Vol. 51 2025年5月5日閲覧