シカとサルの共生関係
体長1 – 1.5m、肩高90cm、体重70 – 79kg。インドの森林や草原に分布するシカの仲間で、ベンガル地方の言葉で「斑点のある」という意味であるチタール (chital) と呼ばれることもあります。背中の白い斑点が特徴的で世界で一番美しい鹿と言われています。角は三つに分かれることが多く、長さは70 – 80cmで1年ごとに生え変わります。
近年スポーツハンティングの狩猟対象として米国や南米などに移入されましたが、牧場から脱走して現地に定着してしまう事例もあり、特に捕食動物のいないハワイでは6万頭にまで繁殖して、自動車との接触事故が増え、植生の破壊や現地の生態系を揺るがす問題となっています。
生息地が重なるサルの一種ハヌマンラングールとは興味深い関係が観察されています。食性は異なるのでサルの群れは樹上で葉や木の実を食べ、シカは地上で草を食べています。サルは樹上からあたりを見回し、捕食者の接近を見つけると警告します。シカはこれを聞いて早く逃避体制に入れるのです。サルの立場で見るとシカの優れた嗅覚によって敵の接近が分かります。シカにとっては他にも利益があり、樹上のサルが木の実を落とすことによってそれを食べることができるのです。
日本でもシカとサルの共生関係は観察されています。屋久島ではヤクシマザルが落とした葉や木の実をヤクシカが拾い食べるだけでなく、ヤクシカの背中にヤクシマザルが飛び乗る様子も見られます。主だった捕食者のいない屋久島ならではの平和な光景です。
参考文献
47NEWS | コラム | (231)世界で一番美しいシカ 鹿の子もようが消えない | (2013年1月31日) 2024年9月21日閲覧
Chital. RÉSERVE ZOOLOGIQUE DE LA HAUTE-TOUCHE 2024年9月21日閲覧
日刊サン | ニュース | 【ハワイニュース】アクシスジカとの接触事故増加 マウイ郡 | (2022年11月8日) 2024年9月21日閲覧
辻 大和(2008)「霊長類と他の動物の混群現象についての研究の現状」京都大学霊長類研究所. 霊長類研究 Primate Res. 24:3−15 2024年9月21日閲覧
読売新聞オンライン | 屋久島の営み、自然・動物・人が共生…ヤクシカの背中でヤクシマザルたちが毛繕い | (2023年10月18日) 2024年9月21日閲覧