ラクダは3種類いる?
ラクダ科ラクダ族には3種のラクダが現存しています。ヒトコブラクダCamelus dromedarius、野生種のフタコブラクダCamelus ferus、そして家畜種のフタコブラクダCamelus bactrianusです。フタコブラクダは遺伝子分析の結果、野生種と家畜種で別種であるとする説が有力となり、ラクダは3種となりました。フタコブラクダの野生種は中華人民共和国北西部とモンゴルに分布、家畜種はさらに西へカスピ海沿岸、トルコまで分布が広がります。野生種は家畜との競合、乱獲、家畜種との交雑による遺伝子汚染などにより個体数はわずか1,000頭以下となり、絶滅危惧種に指定されています。家畜種は220 – 350cm、尾長55cm、コブまでの体高190 – 250cm、体重300 – 1000kg。移動手段、荷物の運搬に利用される他、毛皮、乳、肉、糞(燃料として)が人間に利用されています。
フタコブラクダは乾燥した砂漠などの厳しい環境下で生き抜くために特殊な能力を持っています。フタコブラクダはヒトコブラクダと同様にほとんど汗をかかないため、長い間水分を保持できます。また海水以上の塩分濃度の水を飲むことができる唯一の哺乳類でもあります。コブは水分とエネルギーに変換される脂肪分が蓄えられており、水なしで長期間移動できます。
さて、ラクダ進化の歴史を紐解くと、約4500万年前の始新世後期に現在の北アメリカ大陸に出現した体長約80cmの動物Protylopusに行き着きます。中新世になるとラクダ亜目からラクダ科が進化し,2 つの系列に分かれます。一つは寒冷に耐えるため大型化し,800 万年前にユーラシア大陸に移動しました。もう一つの系列は,寒さを避けて南下しパナマ地峡の形成とともに南アメリカ大陸にも移動しました。そして残された北アメリカ大陸のラクダの仲間は,12,000年~ 10,000年前,氷河期の終結する時期に最初のヒトが移住したのと同時に姿を消します。
ユーラシア大陸ではラクダ族となり、フタコブラクダとヒトコブラクダに分岐したのは440万年前 のことです。さらにフタコブラクダが野生種と家畜種に分岐したのは約70〜150万年前と考えられています。家畜種のラクダが人間に家畜として飼育されるようになったのは紀元前 4 千年紀から 3 千年紀にかけてバクトリア地方でのことです。
南アメリカ大陸に移動したラクダの仲間はラマ族(グアナコ Lama guanicoe、ラマ Lama glama)とヴィクーニャ属(ヴィクーニャ Vicugna vicugna、アルパカ Vicugna pacos)の4種に進化しています。
参考文献
エコファミリーweb | エコファミ大百科 | フタコブラクダ | (2022年10月5日) 2024年7月27日閲覧
ナショナルジオグラフィック | 動物大図鑑 | フタコブラクダ|(2014年12月1日) 2024年7月27日閲覧
斎藤 成也『ラクダとヒトのDNAからみたシルクロード』国立遺伝学研究所(2017) 2024年7月27日閲覧
今村 薫『ユーラシア大陸におけるラクダ科動物の家畜化』名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 第 54 巻 第 2 号 pp. 51―57(2018年1月31日) 2024年7月27日閲覧
坂田 隆『ラクダの生体貿易』石巻専修大学 研究紀要 第25号 53-58 (2014年3月) 2024年7月27日閲覧
国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 | ラクダ科の国際年2024 | (2024年3月29日) 2024年7月28日閲覧