ホワイトタイガー White tiger


動物ショーの行く末は

ベンガルトラの白変種であり、先天的にメラニン色素を欠いたアルビノとは異なり、オレンジ色の毛皮に含まれる色素フェオメラニンが不足しているために生じたものです。一般的に通常のベンガルトラよりも成長が早く、大きくなる傾向があり、2~3歳で完全に成長します。オスは、体重が200 – 230kgに達し、体長は3mまで成長することがあります。

白いベンガルトラが生まれるには、両親が白色の珍しい遺伝子を持っている必要があり、野生下では1万分の1の確率と言われています。1958年に、インドで発見されたホワイトタイガーを最後に野生の個体は確認されていません。現在動物園では世界で約250頭、日本で約35頭のホワイトタイガーが飼育されていますが、そのほとんどが繁殖された個体です。

ホワイトタイガーは希少で神秘的な姿からエンタテーメントやサーカスでも人気の存在となりました。1990年代のショービジネスの世界でホワイトタイガーを使い、一躍有名になったのが魔術師ジークフリート&ロイです。彼らは継続的にホワイトタイガーをショーに出演させるためにインド政府の協力を得て繁殖に取り組みました。幾多の失敗を繰り返し、最終的にはアメリカのナッシュビル動物園の協力により繁殖に成功しています。しかし、彼らに運命の転機が訪れます。2003年に行われたショーの途中でコンビの一人ホーン・ロイはホワイトタイガーに首を噛みつかれ重傷を負ったのです。ホーンは病院に運ばれる途中で危害を加えたトラを決して傷つけないように懇願しました。運動能力と言語能力を恒久的に失った彼はショービジネスの世界から引退を余儀なくされます。ホーンはその後、長いリハビリテーションを経て再び歩けるようになり、コンビは2009年、チャリティ目的で最後の公演を行いました。その公演にはホーンに重傷を負わせたホワイトタイガーも出演したと報道されました。

現在、サーカスやエンターテイメントの世界では、動物ショーを禁止する流れがあります。人間の見世物になるために調教や長距離の移動を強いられ、大きな苦痛を受けているからです。動物が受けている苦痛を最小限に抑える配慮しようという考えは「動物福祉(Animal welfare)」と言われています。その概念は世界中で広がりつつあり、動物園や水族館の在り方も変化が求められています。

威厳のある佇まいホワイトタイガー

参考文献

“White Bengal Tiger”Animal CornerArchived from the original on 1 April 2008.

ホワイトタイガー | 野生の王国 群馬サファリパーク

Sankhala, K. (1997). Tiger! The Story Of The Indian Tiger. Simon and Schuster. ISBN978-0-00-216124-4.

The Tiger and the Tragic Trick: Siegfried & Roy’s Animal Handler Breaks Silence on Mauling, Alleges Cover-Up

石川 創『動物福祉とは何か』日本野生動物医学会誌, 2010, 15 巻, 1 号, p. 1-3, 公開日 2018/05/04, Online ISSN 2185-744X, Print ISSN 1342-6133 2024年8月12日閲覧


PAGE TOP